投資の「トレンド理論」とは、価格の動きには「方向性(トレンド)」があり、それを捉えて売買判断に活かす考え方です。とくにテクニカル分析(チャート分析)の基本として、よく活用されています。
「相場には方向性がある」
つまり、株価や為替などの価格はランダムに動くのではなく、上昇・下降・横ばいの“トレンド”を形成しながら動くという考え方です。
1. トレンドとは何か?なぜ重要か?
トレンドとは、価格が一定方向に向かって進む傾向のことを指します。トレンドの方向を正しく把握できれば、投資判断の成功確率は格段に上がります。
トレンドには主に以下の3種類があります:
- 上昇トレンド:高値と安値がともに切り上がっている状態
- 下降トレンド:高値と安値がともに切り下がっている状態
- 横ばい(保ち合い)トレンド:価格が一定の範囲で推移している状態
2. ダウ理論:すべてのトレンド分析の原点
チャールズ・ダウが提唱したダウ理論は、モダンなテクニカル分析の礎を築いた理論です。
ダウ理論の6原則
- 平均はすべてを織り込む
- トレンドは3段階からなる(先行期・追随期・過熱期)
- 主要トレンドは、短期トレンドに優先する
- 平均は相互に確認される必要がある
- トレンドは出来高とともに確認される
- トレンドは明確な転換シグナルが出るまで継続する
トレンド転換のシグナル
- 上昇トレンド中に高値・安値の切り下げが確認される
- 移動平均線がクロスして方向が反転
- 出来高の減少とともに価格が伸び悩む
3. トレンドライン:視覚的に方向性を示す
トレンドラインは、ローソク足チャート上で価格の動きに沿って引かれる線で、相場の傾向や節目を視覚的に示します。
引き方の基本
- 上昇トレンドライン:安値と安値を結ぶ線(最低2点以上)
- 下降トレンドライン:高値と高値を結ぶ線(最低2点以上)
機能と活用
- サポート/レジスタンスとして意識されやすい
- トレンドラインのブレイク=トレンド転換のサイン
4. 移動平均線:トレンドを滑らかに可視化する
移動平均線(Moving Average)は、一定期間の価格の平均を取り、それを線で結んだトレンド指標です。相場の方向性と勢いを滑らかに表現します。一緒に使う事でダウ理論の補助ツールとなり得ます。
主な種類と特徴
種類 | 特徴 | 使われ方 |
---|---|---|
SMA(単純移動平均) | 全データに均等な重み | 中長期トレンドの基準線 |
EMA(指数移動平均) | 新しいデータに重み | 短中期トレンドの追跡 |
WMA(加重移動平均) | 直近価格に明確な重み | デイトレードなど超短期向き |
移動平均単体のトレンド判断
- 移動平均線の傾きが上向き→上昇トレンド
- 価格が平均線を上抜けると買いサイン(逆も然り)
- ゴールデンクロス/デッドクロスによる売買判断
ダウ理論の判断に移動平均線を補助ツールとして使う
状況 | ダウ理論での判断 | 移動平均線の役割 |
上昇トレンド中 | 高値・安値が切り上がっている | 移動平均線(特に中期〜長期)が上向きでサポートとして機能 |
転換の兆し | 高値更新に失敗+安値を割る | 移動平均線が横ばい→下向きへ、クロス発生 |
横ばい・不明確 | 保ち合い状態 | 移動平均線が水平、方向感が薄いことを可視化 |
5. 実務でのトレンド分析ステップ
トレンド分析は単体で使うのではなく、複数の指標と組み合わせて初めて実力を発揮します。
実務的な分析フロー例
- トレンドの方向を確認:移動平均線 or ダウ理論による高値・安値の切り上げ/下げ
- トレンドの強弱を確認:ADXや出来高分析と組み合わせる
- トレンド継続 or 転換の兆し:トレンドラインブレイク、クロス、パターン形成など
6. まとめ:トレンドを読むことは相場参加者と共感すること
トレンド理論は、相場参加者どうしが、どう感じているかを共通認識を持てます。
- ダウ理論で流れを理解し、
- トレンドラインで傾向を視覚化し、
- 移動平均線で変化を定量化する
この3つを組み合わせることで、感覚や直感ではなく、構造に基づいた判断ができるようになります。
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