株価が上昇相場にあるとき、「持てる資金をすべて投資に回した方が効率的なのでは?」と考えたくなります。実際、全力投資をして成功した人の話も目にするでしょう。
しかし、私はあえて「キャッシュポジションを一定割合確保する」という戦略をとっています。この記事では、その理由と考え方について、私自身の投資スタイルを交えて解説します。
全力投資の魅力と落とし穴
全力投資とは、保有資金のほぼすべてを株式などのリスク資産に投じることです。理論上は、資金の稼働率が高いため、上昇相場でのリターンも最大化できます。
しかし、全力投資には以下のようなリスクも伴います:
• 短期的な暴落で大きく資産を減らす可能性
• 急な買い場に現金がなく、追加投資できない
• 精神的ストレスが大きく、冷静な判断を損なう
特に、現金ゼロで株価が下がったときの無力感は、経験してみないと分かりません。キャッシュポジションは、単なる“待機資金”ではなく、「戦略的余白」としての価値があります。
キャッシュポジションを持つメリット
私がキャッシュポジションを一定量持つ理由は、大きく分けて以下の4つです:
1. 暴落時にチャンスを拾える
• 株価が急落したときに、割安になった銘柄を買い増すことができます。これはリターンの源泉になります。
2. 精神的な安定を得られる
• 常に「まだ打てる手がある」と思えることは、投資家としての冷静さを保つうえで重要です。
3. 再投資の柔軟性が上がる
• 決算後の急落銘柄、新たに注目を集めたテーマ株など、タイムリーに動けます。
実際のキャッシュポジション比率はどのくらい?
キャッシュの比率に「正解」はありませんが、私のポートフォリオでは以下のように分類しています:
• 株式などリスク資産:70〜80%
• 現金・現金同等物(待機資金):20〜30%
また、市場環境によってこの比率は動的に調整しています。
相場状況 | キャッシュ比率の目安 | 戦略 |
---|---|---|
強気相場(上昇トレンド) | 10〜15% | 積極投資、ただし押し目買い資金は温存&RSIなど割高、勢いが落ちた時に早めに離脱します。 |
中立相場 | 20%前後 | 状況を見ながら分散投資 |
弱気相場(下落トレンド) | 30〜50% | 買い場を待ちつつ守備重視 |
このように、キャッシュポジションを「リスクの緩衝材」として使うイメージです。
キャッシュポジションの活用例
実際に、2022年や2023年の米国株調整局面では、保有していたキャッシュによって:
• 高配当株が急落したタイミングで買い増し
• テック銘柄のオプション戦略を仕込む
などを冷静に対応する事ができました。
もし全力投資をしていたら、これらの機会は「見ているだけ」で終わっていたかもしれません。
キャッシュは“何もしない”ではなく、“次に備える”
投資の世界では「機会損失」を嫌う傾向がありますが、それは“今しかない”という焦りによって判断を誤らせます。
私はむしろ、今すぐ動かないという選択も、立派な戦略のひとつだと考えています。
キャッシュポジションとは、「まだ動かない余裕」「備える力」の象徴です。
まとめ:投資における“余白”の重要性
全力投資には一見、力強さや効率の良さがありますが、柔軟性とリスク管理を失うという大きな欠点があります。
だからこそ私は、キャッシュという“余白”を必ず残すようにしています。
投資において、すべてを出し切る必要はありません。むしろ、引く手を持っているからこそ、攻め手が活きるのです。
あなたも、ポートフォリオに「次の一手」を打つためのスペースを残してみてください。それが、長く安定した投資を続けるための基盤になるはずです。
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