投資家を悩ませる:支持線と抵抗線の実務的な活かし方

テクニカル分析として単純ながら奥が深い、「支持線(サポート)」と「抵抗線(レジスタンス)」について解説します。難しい数学的な背景はありませんが、ここを超えたら上昇や下降する可能があるラインとして認識されています。


1. 支持線・抵抗線とは何か?

支持線(サポートライン)

過去に価格が下げ止まった価格帯。買い圧力が強まり、価格が反転・反発しやすいエリア。

抵抗線(レジスタンスライン)

過去に価格が上げ止まった価格帯。売り圧力が強まり、上昇が抑えられるエリア。

これらの線は、多くの市場参加者が「前回止まった場所」として記憶・意識しており、

価格が再接近すると、過去と同じ現象が再現されやすい という特徴があります。


2. なぜ、同じ現象が再現されるのか?

チャートは、投資家の思惑・希望・恐怖が集約された結果です。

  • 支持線=「前回ここで買った人が再び買う」「含み損が減ってきた人がホールドを選ぶ」
  • 抵抗線=「前回ここで売った人が再び売る」「含み益を確定させたいと感じる」

つまり、過去に多数の取引があった価格帯では、投資家のもしかしたら、また同じ事が起きると考え、それが価格反応を生むのです。

この記憶の痕跡=支持線・抵抗線こそ、最も“人間くさい”テクニカル分析の象徴ともいえます。


3. 支持線・抵抗線の見つけ方(実践編)

手法①:ローソク足のヒゲ・実体に注目

  • 明確に反発しているポイントが複数あれば、それがライン候補
  • ヒゲの先端は“実際の反応”、実体は“売買が成立した範囲”

手法②:出来高が集中した価格帯(VAP/POC)

  • Volume at Price(VAP)分析を使えば、“出来高で見た支持抵抗”が浮かび上がる
  • 特にPOC(Point of Control)は、売買の“中心地”として意識されやすい

手法③:節目となる価格(ラウンドナンバー、過去高安)

  • 100円、1500円、3000ドルといったキリの良い価格
  • 過去の高値・安値、窓(ギャップ)なども抵抗線・支持線になりやすい

4. 実務にどう活かすか?

支持線・抵抗線は、以下のような判断に活用できます:

売買のタイミング判断

  • 抵抗線接近で売却を検討/支持線接近で買いを検討
  • ブレイク後は“戻り”や“押し目”でエントリー

損切り・利確ラインの設定

  • サポート割れ=損切りトリガー
  • レジスタンス到達=利確ポイント

ポジション構築の根拠づけ

  • ラインが重なる価格帯(支持+出来高+移動平均など)は“鉄板ゾーン”とされる

5. ブレイクと“だまし”をどう見極めるか?

支持線・抵抗線を使う上で、最も重要なテーマのひとつが“ブレイクの信頼性”です。

見極めポイント

項目ブレイクが本物の可能性だましの可能性
出来高増加している通常と変わらない or 減少
ローソク足長い実体で抜けているヒゲだけ抜けた/すぐ戻る
トレンド方向既存トレンドと同方向のブレイクトレンドと逆行する動き
時間足の一致複数時間足でブレイクが確認できる小さい時間足のみでの抜け

▶ 実務Tip: “抜けたら乗る”のではなく、“抜け+戻り(リテスト)で乗る”が鉄則


6. 実例:チャートに刻まれた記憶のライン

  • Apple(AAPL):150ドルラインが数ヶ月にわたって支持線→割れ→抵抗線に変化

多くの銘柄や指数において、過去の蓄積がラインとなり、後の意思決定に影響を及ぼす現象が見られます。


7. 覚えるポイント

  • サポート/レジスタンスの定義と言葉づかい
  • トレンド中におけるラインの機能(上昇中:支持、下降中:抵抗)
  • 応用として水平ラインだけでなく、トレンドライン(斜めライン)もサポート/レジスタンスの一種と認識できると投資のチャンスが広がる事。

8. まとめ:支持線と抵抗線は投資家の恐怖と希望の集合体

支持線と抵抗線は、

「誰がどこで迷い、誰がどこで決断したか」 という市場の心理履歴そのものです。

  • 見えるラインには、見えない心理が詰まっている

テクニカル分析の中で最も直感的で、かつ最も人間的な要素だからこそ、

実務の意思決定に強い根拠を与えるツールとして、今も広く活用されています。

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